【2026-03-05の市況概要】 (Market Pulse)
昨日の市場は「政策期待」と「地政学リスク」が激しく衝突する展開となった。中国国内では「両会(全人代・政治協商会議)」における5%前後のGDP成長目標設定やAI産業への支援姿勢が好感され、上海総合指数は4108.57 (+0.64%)と反発、ハンセン指数(HSI)も25321.34 (+0.28%)と節目の25,000ポイントを死守した。
しかし、グローバル環境は急速に悪化している。中東情勢の緊迫化を受け、WTI原油先物は78.87ドル (+5.64%)へと暴騰。これに伴いインフレ再燃懸念から米10年債利回りは4.15%へ上昇し、恐怖指数(VIX)は前日比+12.29%の23.75まで急伸した。中国株は底堅さを見せたものの、外部環境のリスクオフ圧力が上値を重くしている。
【相場変動の主因】 (Key Drivers)
昨日の相場を動かした主因は、以下の2点における綱引きである。
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「両会」での政策アンカー効果:
中国政府が「5%前後」という現実的かつ意欲的な成長目標を掲げたことが、市場に一定の安心感を与えた。特にニュースにある「AI開発の秩序ある推進」などハイテク分野への言及は、センチメントの悪化を防ぐ防波堤として機能している。 -
中東リスクと「Bad News is Bad News」:
トランプ政権周辺からの「イラン新指導者選出への関与」発言や、ウクライナによる対イラン・ドローン対策要請など、地政学リスクが複合的に絡み合い原油価格を押し上げた。これがS&P500(-0.56%)等の米国株調整を招き、中国市場への資金流入を抑制する要因となっている。
昨日のシナリオ検証
昨日のメインシナリオ(条件:両会への期待継続が原油高を相殺)は【的中】した。
要因は、外部環境(米株安・原油急騰)が悪化したにもかかわらず、上海市場が4100ポイント台を回復し、香港市場も大きく崩れなかった点にある。投資家はグローバルな「Fear(恐怖)」モードの中にありながらも、中国固有の政策イベント(両会)による下支えを評価し、パニック売りを回避した。
原油高・関税懸念の二重苦:上海4100割れと香港2.5万の攻防 でも指摘した通り、4100レベルでの攻防を制したことはテクニカル的に大きな意味を持つ。
【注目アセット】 (Asset Watch)
| 資産 | 価格 | 変化 (1d) | コメント |
|---|---|---|---|
| Crude Oil (WTI) | $78.87 | +5.64% | 中東リスクで急騰。$80突破なら株式市場全体に強烈な逆風となる。 |
| VIX Index | 23.75 | +12.29% | 警戒域の20を突破し急伸。ボラティリティ拡大への備えが必須。 |
| 上海総合指数 | 4,108.57 | +0.64% | レンジ上限の4100を回復。政策期待が実需の買いを誘っている。 |
| Hang Seng (HSI) | 25,321.34 | +0.28% | 米金利上昇にも関わらずプラス引け。25,000のサポート強度が確認された。 |
【シナリオ分析】 (Scenarios)
週末の米雇用統計(3/6)を控え、VIXの高止まりが続く中での難しい舵取りとなる。
短期シナリオ (今後48時間)
- メインシナリオ (確率 50%):
- 条件: 原油価格が78-79ドル付近で高止まりし、両会からの追加サプライズがない場合。
- 展開: 上海総合は4100前後での底堅い推移を維持するが、上値は重い。HSIは米雇用統計待ちで動意を欠き、25,000-25,500のレンジ内で神経質な展開となる。ハイテク株は個別物色に留まる。
- アップサイド (Bull) (確率 20%):
- トリガー: 米雇用統計の前哨戦となる指標(失業保険申請件数など)が適度に軟化し、米金利上昇が一服。かつ、中国当局から具体的な内需刺激策(不動産・消費関連)が発表される。
- ターゲット: リスクオン再燃で上海総合は4150を突破、HSIはショートカバーを巻き込み25,800を目指す。
- ダウンサイド (Bear) (確率 30%):
- トリガー: 中東情勢のさらなる悪化で原油が80ドルを突破、またはVIXが25を超えるスパイクを見せる場合。
- リスク: グローバルなリスク回避売りが波及し、HSIは24,800の支持線を割り込み急落。上海総合も4050付近まで調整。
- 原油70ドル突破で香港株急落:両会前の上海と鮮明なデカップリング のような急落パターンに注意。
着目イベント: 米新規失業保険申請件数(今夜)、米雇用統計(明日夜)。
中期シナリオ (1-2週間)
- 見通し: Neutral (中立)
- 重要イベント: 全人代の閉幕、米雇用統計(3/6)、米CPI(3/11)。
- リスク: 原油価格のスパイク継続と、トランプ政権による対中関税政策の具体化。VIXが20台に定着する場合、中期的な調整トレンド入りの可能性が高まる。
【投資戦略】 (Outlook)
スタンス: 「様子見 (Wait)」および「深い押し目での短期買い (Buy Dips cautiously)」
VIXが23台に突入しており、ここからの積極的な上値追いはリスクリワードが悪い。中国固有の材料(両会)はポジティブだが、グローバルな「Fear」が勝る局面では、キャッシュポジションを高めに維持するのが賢明だ。
- エントリー戦略:
- HSIが24,800-25,000のサポートゾーンまで調整した場合のみ、リバウンド狙いの短期ロングを検討。
- セクターとしては、両会での政策恩恵が期待できるAI・半導体関連や、原油高メリットのあるエネルギー関連(CNOOC等)への選別投資に限定する。
- リスク管理:
- 上海総合が4080を明確に下回る、またはWTI原油が80ドルを超えて引けた場合は、即座にポジションを縮小(De-risk)すること。
- 明日の米雇用統計前には、オーバーナイトのリスクを極小化することを推奨する。


