【2026-02-23の市況概要】 (Market Pulse)
23日の米国市場は、トランプ政権による新たな関税リスクと、AI技術による既存ビジネスの破壊(ディスラプション)懸念が重なり、全面安の展開となった。S&P 500は前日比-1.04%の6837.75、Nasdaqは-1.13%の22627.27といずれも1%超の下落を記録した。
特筆すべきは、投資家の恐怖心理を示すVIX指数が前日比+10.06%と急騰し、心理的節目の20を超えて21.01で引けたことである。通常、株安時の避難先となる米国債には資金が流入し、10年債利回りは4.03%(-1.39%)まで低下したが、これがハイテク株の支援材料になることはなかった。また、安全資産としての金(Gold)は+3.73%と急伸し5247.9ドルへ到達、典型的な「質への逃避」が発生している。一方でリスク資産の象徴であるBitcoinは-4.22%と大きく値を崩した。
【相場変動の主因】 (Key Drivers)
本日の下落を主導したのは、以下の2つの複合要因である。
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「AI淘汰」の現実化(IBMショック):
Anthropic等の生成AI進化により、従来のITコンサルティングやプログラミング業務が代替されるとの懸念が台頭。IBMが-13%と暴落し、サイバーセキュリティ関連株も連れ安となった。これまで「AI恩恵」一色だった市場が、「AIによる既存企業の淘汰」という負の側面に焦点を当て始めたことは、セクターローテーションの構造変化を示唆している。 -
トランプ関税によるスタグフレーション懸念:
トランプ大統領の関税強化案に対し、EUが対米貿易交渉を延期するなど報復の連鎖が懸念されている。これにより「インフレ再燃(関税コスト)」と「景気減速(貿易停滞)」が同時に進行するスタグフレーション・リスクが意識された。債券利回りの低下は「インフレ鎮静化」ではなく「将来の成長鈍化」を織り込みに行った動きと解釈すべきであり、それゆえ株価のサポートにならなかった。
詳しくは、【週次分析】トランプ関税15%とスタグフレーション:NVIDIA決算前の「静寂と嵐」でも触れた通り、関税リスクがマクロ経済の重石となりつつある。
昨日のシナリオ検証
昨日のメインシナリオ(金利上昇による調整)は部分的に実現(Hit)したが、その内実は異なるものであった。
* 結果: S&P 500は想定通り6800台前半へ調整した。
* 要因分析: 想定していた「金利上昇」ではなく、「関税リスク」と「個別株(IBM)発のセンチメント悪化」が主因であった。金利が低下したにもかかわらず株価が下落した点は、市場の関心が「割引率(金利)」から「成長率(景気・業績)」へシフトしたことを示しており、より深刻なリスクオフのサインと言える。
【注目アセット】 (Asset Watch)
| 資産 | 価格 | 変化 | コメント |
|---|---|---|---|
| S&P 500 | 6837.75 | -1.04% | 重要サポートライン付近。ここを割ると6750までの下値余地が開く。 |
| VIX | 21.01 | +10.06% | リスクオフ警戒域の20を突破。ボラティリティの拡大トレンド入りを示唆。 |
| Gold | 5247.9 | +3.73% | 圧倒的な独歩高。地政学リスクと通貨不安の受け皿として機能。 |
| Bitcoin | 64801.09 | -4.22% | 米金利4.1%定着でBTC膠着からの下放れ。リスク資産回避の波に飲まれる。 |
| IBM | (個別) | -13.00% | AIによるビジネスモデル破壊懸念の象徴銘柄として急落。 |
【シナリオ分析】 (Scenarios)
短期シナリオ (24-48h)
VIXが20を超えたことで、市場は不安定な値動き(Whipsaw)を繰り返しやすい状態にある。
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メイン (Main):
- 条件: 関税懸念の継続と、2/25のCPI発表待ちによる買い手控え。
- 予想: VIXは20台で高止まりし、S&P 500は6800-6850のレンジで神経質な展開が続く。積極的な押し目買いは入らず、ショートカバーによる小反発にとどまる。
- 確率: 50%
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アップサイド (Bull):
- 条件: 米10年債利回りの一段の低下(4.0%割れ)と、RSI(現在39.6)の売られすぎシグナルへの反応。
- ターゲット: ナスダック主導で自律反発し、S&P 500は6900台回復を目指す。
- 確率: 25%
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ダウンサイド (Bear):
- 条件: 本日の「CB消費者信頼感指数」が悪化、またはトランプ氏の追加発言による関税リスクの再強調。
- リスク: 恐怖心理が連鎖し、S&P 500は年末以来の重要サポートである6750レベルを試しに行く。
- 確率: 25%
中期シナリオ (1-2 Weeks)
- 見通し: Bearish(弱気)
- 重要イベント: 2/25 CPI(消費者物価指数)、2/27 GDP/PCEデフレーター
- リスク: スタグフレーション懸念。関税によるコストプッシュ型インフレと、ハイテク企業の設備投資(Capex)に対する収益性への疑念が同時に高まるシナリオ。特にCPIが上振れた場合、金利低下の支えすら失う最悪のケースとなる。
【投資戦略】 (Outlook)
結論:様子見(Wait)および 戻り売り(Sell Rallies)
市場のセンチメントスコアが「Fear(32)」に沈み、VIXが21台に突入した現状では、安易な押し目買い(Buy the Dip)は推奨できない。特に、金利低下が好感されない相場つきは、ファンダメンタルズへの懸念が深い証拠である。
- スイング戦略:
25日のCPI通過まではポジションを縮小し、キャッシュ比率を高めるのが賢明。もし短期的に自律反発があり、S&P 500が6900近辺まで戻す場面があれば、そこはリスクヘッジのためのショート(売り)のエントリーポイントとなる。 - 注目レベル:
- レジスタンス(上値抵抗): 6920 – 6950
- サポート(下値支持): 6800(心理的節目)、6750(構造的サポート)
AIセクターに関しては、NVIDIA等の「インフラ提供側」と、IBM等の「破壊される側」の選別が急務となる。一律のハイテク買いは危険な局面に差し掛かっている。


