【2026-02-21の市況概要】 (Market Pulse)
米株市場は反発を見せたものの、アジア市場、特に中華圏資産はその恩恵を享受できず、「デカップリング(分断)」が鮮明な一日となった。
米国市場ではS&P 500が6,909.51(+0.69%)、Nasdaqが22,886.07(+0.9%)と堅調に推移し、VIX指数は19.09(-5.64%)へ急低下して市場心理の改善を示唆した。しかし、香港ハンセン指数(HSI)はこれに逆行し、26,413.35(-1.1%)で取引を終了。本土市場(上海総合)は春節休暇による休場が続いているが、オフショア市場では地政学リスクへの警戒感が支配的である。
特筆すべきは、通常相関の高い「米ハイテク株高」と「香港テック指数」の連動性が崩れている点だ。これは、市場の焦点がマクロ経済の成長から、トランプ政権による具体的な通商制裁リスクへとシフトしていることを物語っている。
【相場変動の主因】 (Key Drivers)
本日の香港市場の軟調推移は、トランプ大統領による関税引き上げ発言(10%→15%)が決定打となった。
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関税リスクの具体化とプレミアム剥落
トランプ氏が「世界的な関税率を従来の10%から15%へ引き上げる」と示唆したことは、輸出依存度の高い中国経済にとって直接的な打撃となる。Nasdaqが上昇してもHSIが下落したのは、「AIブームによる恩恵」よりも「貿易摩擦によるファンダメンタルズ毀損」が意識されたためだ。 -
欧州市場からの締め出し懸念
ニュースフローにある通り、欧州におけるAI・半導体分野からの中国企業排除の動きが強まっていることも、ハイテク株の上値を重くしている。これにより、HSI構成銘柄のEPS成長期待が下方修正される圧力が働いている。 -
安全資産への逃避
株式市場のリスクオン(米株)とリスクオフ(香港株)が混在する中、ゴールド(GC=F)が5,059.3(+1.68%)と史上最高値圏で推移している点は見逃せない。これは、関税引き上げがもたらす「スタグフレーション(インフレ+不況)」リスクをスマートマネーがヘッジしている証左である。
昨日のシナリオ検証
昨日のメインシナリオ(地政学リスク継続でHSIは上値重く、26,200-26,500レンジ)は【的中】した。
HSI終値は26,413となり、予測レンジ内に収まった。米株市場の自律反発期待があったものの、前述のトランプ氏による関税タカ派発言が上値を強力に抑え込む要因として機能した。詳しくは地政学緊張でHSI 26,400台へ軟化:米スタグフレーション懸念の影でも指摘した通り、構造的な売り圧力が継続している。
【注目アセット】 (Asset Watch)
| 資産 | 価格 | 変化 | コメント |
|---|---|---|---|
| Hang Seng (HSI) | 26,413.35 | -1.10% | 米株高に追随できず。RSI 30.4と売られすぎ水準だが、関税懸念で自律反発力は弱い。 |
| Gold (GC=F) | 5,059.30 | +1.68% | 米金利上昇(10Y 4.09%)下でも上昇。通貨価値毀損と関税インフレへのヘッジ需要が旺盛。 |
| USD/CNY | 6.91 | 0.00% | 春節中のため動きはないが、オフショアでは元安圧力が潜在。15%関税発言は人民元安要因。 |
| Nasdaq | 22,886.07 | +0.90% | 香港とは対照的に堅調。米国内需主導銘柄への資金回帰が見られる。 |
【シナリオ分析】 (Scenarios)
短期シナリオ (今後24-48時間)
RSIが30近辺にあるためテクニカル的な反発余地はあるが、ファンダメンタルズの悪化がそれを相殺する展開を予想する。
- メイン (Main – 60%):
米株高とテクニカル的な売られすぎ(RSI 30)が下値を支えるものの、関税15%発言が重石となり、積極的な買いは入らない。HSIは26,300-26,700のレンジで方向感を欠く展開。ボラティリティは低下せず、神経質な動きが続く。 - アップサイド (Bull – 20%):
米最高裁によるトランプ関税政策の無効化判決などが材料視され、過度な貿易摩擦懸念が後退する場合。ショートカバーが誘発され、HSIは27,000台回復を目指す。 - ダウンサイド (Bear – 20%):
欧州の対中規制具体化やトランプ氏のさらなる強硬発言(特定企業への制裁など)が出た場合、パニック売りが発生。心理的節目の26,000を割り込むリスクがある。 - 着目イベント:
2月25日の米CPI(消費者物価指数)およびトランプ大統領の演説。これらがインフレ再燃を示唆すれば、新興国市場からの資金流出が加速する。
中期シナリオ (1-2週間)
- 見通し: Neutral (中立)
- 重要イベント: 本土市場再開、米CPI (2/25)、米GDP (2/27)。
- リスク: トランプ政権の通商政策の法的有効性と対中規制の具体化。
- 構造: 本土市場が再開した際、政府系ファンド(ナショナルチーム)による買い支えが入るかが焦点。春節観光+8%で香港株底堅さの記事で触れた通り、内需回復の兆しが見えれば、外需リスクを相殺できる可能性がある。
【投資戦略】 (Outlook)
結論:様子見 (Wait) / 26,000割れでの打診買い
現状、積極的にリスクを取る局面ではない。米株との連動性が崩れている以上、米国の好材料を香港株の買い材料とするのは危険である。Sentiment Scoreが38(Fear)と低迷しており、市場は悪材料に敏感に反応しやすい地合いだ。
- ロング戦略: 現在のRSI 30.4は魅力的な水準に見えるが、関税リスクが織り込まれ切っていない可能性がある。HSIが26,000の節目をテストし、明確なサポートが確認されるまでは静観が賢明。もし26,000を割り込むようなパニック売りがあれば、そこは短的なリバウンド狙いのエントリーポイントとなり得る。
- ショート戦略: 戻り売りが機能しやすいが、既にかなり売り込まれているため、追撃売りはリスクリワードが悪い。26,800-27,000付近まで戻した局面でのショートを推奨。
リスク管理:
VIXは低下したが、中華圏特有の政策リスクは高まっている。中東緊迫でVIX20突破:香港株は春節消費支えに底堅さ維持で分析したように、外部環境の変化に脆弱な状態が続いているため、ポジションサイズは通常より落とすべきである。


