【2026-02-12の市況概要】 (Market Pulse)
米国市場は、ハイテク大手の個別悪材料とマクロ経済指標の下振れが重なり、明確なリスクオフ展開となりました。S&P 500は前日比-1.57%の6832.76ポイントまで下落し、心理的・技術的な節目であった6850を割り込んで引けました。ハイテク比率の高いNasdaqはさらに厳しく-2.03%の下落を記録しています。
特筆すべきは投資家心理の急激な悪化です。恐怖指数であるVIXは前日比+17.96%と急騰し、20.82と危険水域とされる20台へ突入しました。一方、債券市場では成長懸念から安全資産への逃避(Flight to Quality)が起こり、米10年債利回りは4.10%(-1.63%)へ低下しました。従来の「金利低下=ハイテク買い」の相関が崩れ、「悪いニュースは売り」という逆業績相場的な反応が見られます。
【相場変動の主因】 (Key Drivers)
本日の下落を主導したのは、「ハイテク大手の業績・規制懸念」と「景気減速(GDP下振れ)への警戒感」のダブルパンチです。
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ハイテク個別株の崩壊:
- Cisco Systemsが2022年以来最悪の下落率を記録しました。メモリ価格高騰による利益率圧迫が嫌気され、ハードウェアセクター全体への連想売りを誘発しています。
- Appleも4月以来の大幅安となりました。FTC(連邦取引委員会)による監視強化に加え、生成AI機能「Siri」の遅延報道が成長ストーリーに冷や水を浴びせています。
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マクロ経済の減速懸念:
- 本日発表のGDP速報値が市場予想を下振れし、昨今の小売売上高の弱さと合わせて景気後退(リセッション)懸念が台頭しました。
- これに加え、明日(2/13)に控えるCPI(消費者物価指数)への警戒感が重なっています。インフレが粘着質である一方で景気が減速する「スタグフレーション」シナリオを市場は最も恐れています。
昨日のシナリオ検証
昨日の分析におけるBearシナリオ(確率30%)が実現しました。
- 想定条件: 「弱い経済指標の継続」および「リスク回避の加速」。
- 結果: S&P 500は6850を割り込み、一時6832まで下落。VIXは20台へ到達。
- 要因分析: 想定していた小売の弱さに加え、GDPの下振れが決定的要因となりました。さらに、CiscoやAppleといった指数寄与度の高い銘柄に固有の悪材料が出たことで、ハイテク株主導の下げが加速し、想定レンジ下限(6850)をブレイクする展開となりました。
詳細な背景分析については、以下のレポートも参照してください。
小売ショックでスタグフレーション懸念:CPI直前のS&P500戦略
【注目アセット】 (Asset Watch)
| 資産 | 価格 | 変化率 | コメント |
|---|---|---|---|
| S&P 500 | 6,832.76 | -1.57% | 重要サポート6850を下方ブレイク。RSIは43.3まで低下し、売り圧力が継続。 |
| Nasdaq | 22,597.15 | -2.03% | Cisco、Appleショックで大幅安。50日移動平均からの乖離が-3.33%まで拡大。 |
| VIX | 20.82 | +17.96% | 1日で18%近い急騰。ボラティリティの急拡大は、さらなるダウンサイドを示唆。 |
| US 10Y Yield | 4.10% | -1.63% | 株安による質への逃避。金利低下が株価支援材料として機能していない点に注意。 |
【シナリオ分析】 (Scenarios)
明日2月13日のCPI(消費者物価指数)発表が最大の分岐点となります。
短期シナリオ (今後24-48時間)
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メインシナリオ (確率 50%):
- 条件: CPIが市場予想(前月比0.3%程度)通り、または微増。
- 展開: インフレの粘着性と景気減速の板挟みとなり、S&P 500は6800付近での底固めを模索。VIXは20前後で高止まりし、積極的な買いは入りにくい。
- 着目イベント: 米CPI (2/13)、失業保険申請件数。
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Bullシナリオ (確率 20%):
- 条件: CPIが予想を下回り、インフレ鎮静化が明確になる。
- 展開: 「景気減速=利下げ余地拡大」と好意的に解釈され、金利低下を好感したハイテク株のショートカバー(買い戻し)が発生。S&P 500は6900の回復を目指す。
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Bearシナリオ (確率 30%):
- 条件: CPIが予想を上振れ(スタグフレーション懸念の増大)。
- 展開: 「景気は悪いのにインフレは止まらない」という最悪のケース。金利が反発し、株価は一段安へ。S&P 500は6700-6750帯へ下落し、VIXは25を目指す展開。
中期シナリオ (1-2週間)
- 見通し: Bearish / Volatile(弱気・不安定)
- 重要イベント: 米CPI(2/13), 小売売上高(2/17), FOMC議事録(2/18)
- リスク: 逆業績相場への完全移行。これまで市場を支えてきた「AIブーム」と「ソフトランディング期待」が同時に剥落する場合、調整は長引く可能性があります。
【投資戦略】 (Outlook)
スタンス: 戻り売り (Sell Rallies) / 様子見 (Wait)
S&P 500が重要なサポートラインであった6850を明確に割り込んだため、短期的には下落トレンド入りを示唆しています。CPI発表を前にした「押し目買い」はリスクが高く推奨されません。
- エントリー: CPI通過後までポジション構築は見送り。もしCPI結果が中立で、株価が一時的に反発した場合、6850-6880付近での戻り売りを検討。
- リスク管理: VIXが20を超えているため、オプション市場でのプット需要が高まっています。ダウンサイドリスクとして6750(次のサポート)を意識しつつ、ロングポジションを持つ場合はヘッジが必須です。
- 注目銘柄: ハイテク(XLK)は回避。ディフェンシブ、あるいは好決算で逆行高となっているRivian(+15%)のような個別材料株への短期資金循環に留めるのが賢明です。
市場センチメントは「Fear(恐怖)」に傾いています。無理に底を当てにいかず、ボラティリティの収束を待つ局面です。


