【2026-02-10の市況概要】 (Market Pulse)
10日の米国市場は、重要経済指標の悪化を受け、景気後退への警戒感が支配する展開となりました。S&P 500は前日比-0.33%の6941.81、Nasdaqは-0.59%の23102.47といずれも続落。一方で、安全資産への逃避(Flight to Quality)が加速し、米10年債利回りは4.15%(前日比-1.21%)へ急低下しました。
特筆すべきは、これまで株高の燃料となっていた「金利低下」が、今回は「景気減速シグナル」としてネガティブに捉えられた点です(Bad News is Bad News)。翌11日に控えるCPI(消費者物価指数)発表を前に、不透明感からVIX指数は17.79(+2.48%)へ急伸しており、投資家の恐怖心理が高まっています。為替市場では金利差縮小を意識したドル売りが加速し、ドル円は154.37円まで円高が進行しました。
【相場変動の主因】 (Key Drivers)
市場のセンチメントを「Fear(恐怖)」へ押し下げた主因は、小売売上高の下振れと、それに伴うスタグフレーション(不況下のインフレ)リスクの台頭です。
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小売売上高ショックと消費減速
1月の米小売売上高は予想(0.4%増)に対しゼロ成長にとどまりました。これにより、「堅調な米経済」というシナリオに亀裂が入りました。Fordの決算ミス(4年ぶりの大幅未達)も重なり、実体経済の減速が企業業績を蝕み始めているとの懸念が広がっています。 -
「悪いニュースは悪いニュース」へのレジーム変化
これまで市場は「指標悪化 → FRB利下げ期待 → 株高」という反応を示してきましたが、昨日は金利が4.1%台へ急低下したにもかかわらず、株価は下落しました。これは市場の焦点が「インフレ抑制」から「リセッション回避」へシフトしつつあることを示唆しています。 -
CPI前のポジション調整
翌日のCPI発表を前に、機関投資家はリスク量を縮小させています。もしCPIが高止まりすれば、「景気は悪いのにインフレは収まらない」という最悪のスタグフレーション・シナリオが現実味を帯びるため、VIXを買うヘッジの動きが顕著です。
昨日のシナリオ検証
結果:Miss(予想外の反応)
昨日のメインシナリオでは「経済指標の軟化による金利低下があれば、ハイテク株を中心に買い直される(強気)」と想定していました。条件である「金利低下(4.15%へ低下)」は満たしましたが、トリガーとなった小売売上高の弱さが予想を超えて深刻だったため、成長懸念が利下げ期待を上回り、株価は反落しました。
詳しくは米金利4.2%台へ急低下:ハイテク急騰でS&P6900台回復とCPIへの警戒で解説した「金利低下=株高」の相関が崩れた形となります。
【注目アセット】 (Asset Watch)
| 資産 | 価格 | 変化 | コメント |
|---|---|---|---|
| S&P 500 | 6941.81 | -0.33% | 7000の大台回復に失敗。6900のサポートラインを維持できるかが焦点。 |
| US 10Y Yield | 4.15% | -1.21% | 景気減速懸念で債券買いが加速。4.1%を割り込むとリセッション織り込みへ。 |
| VIX | 17.79 | +2.48% | 15-16のレンジを上抜け。20に接近すれば本格的なリスクオフ警戒域。 |
| USD/JPY | 154.37 | -1.83% | 米金利急低下でドル売り加速。155円の防衛ライン決壊で下値模索。 |
【シナリオ分析】 (Scenarios)
翌日(11日)のCPI発表が最大の分岐点となります。
短期シナリオ (今後24-48時間)
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メインシナリオ (確率 50%)
- 条件: CPIが市場予想(前年比0.4%増程度)と一致、またはわずかに鈍化。
- 展開: 過度なスタグフレーション懸念が和らぎ、金利の安定と共に株式市場は安堵感から買い戻される。
- ターゲット: S&P 500は6950-7000へ緩やかに反発。
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アップサイド (確率 20%)
- 条件: CPIが予想を明確に下回り、インフレ沈静化が確認される。
- 展開: 前日の弱い小売統計と合わせ、「FRBがハト派化(積極利下げ)せざるを得ない」との観測が台頭。金利は4.1%割れを試す。
- ターゲット: S&P 500は7000ポイント再トライ。
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ダウンサイド (確率 30%)
- 条件: CPIが予想を上振れ(インフレ再燃)。
- 展開: 「景気減速(小売弱)」×「インフレ高止まり(CPI強)」の組み合わせにより、スタグフレーション懸念が急浮上。
- リスク: S&P 500は6850レベルへ急落。VIXは20台へ突入。
中期シナリオ (1-2週間)
- 見通し: Neutral (中立)
- 重要イベント: 米CPI・PPI発表、ECBラガルド総裁発言
- リスク: インフレ指標の高止まりと実体経済(消費)の乖離。特にハイテク株主導の相場から、ディフェンシブ選好へのセクターローテーションが加速する可能性に注意が必要です。
【投資戦略】 (Outlook)
結論:様子見(Wait)および ダウンサイドへのヘッジ優先
CPI通過までは方向感が定まらないため、積極的なポジション構築は推奨されません。S&P 500の現在値(6941)は「押し目」に見えますが、CPIが上振れた際のリスクリワードが悪すぎます。
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スイングトレード:
- CPI発表までノーポジション推奨。
- 発表後、インフレ鈍化が確認できれば、過剰に売られたハイテク株(特にAI関連以外のソフトウェアや一般消費財)のリバウンド狙い。
- 金利低下でハイテク逆襲:Oracle急騰とS&P6900台固めのようなハイテク主導の反発シナリオは、CPIの結果次第で復活する可能性があります。
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リスク管理:
- S&P 500 サポート: 6900。ここを明確に下抜けた場合、短期的な調整トレンド入りが確定するため、ストップロスは必須。
- ドル円: 米金利低下圧力が強いため、戻り売り優勢。155.50近辺がレジスタンスとなる公算。
総括:
市場は「悪いニュース」を素直に嫌気し始めています。明日のCPIが「良いニュース(インフレ低下)」であれば救われますが、そうでなければ調整が深まる局面です。キャッシュ比率を高め、ボラティリティの急騰に備えてください。


