9万ドルの攻防、再び。
ビットコイン(BTC)は、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策決定と、木曜日に控える米上院での暗号資産法案採決という「二大イベント」を前に、心理的節目である9万ドル台を奪還しました。先週末に記録した8万6,000ドル付近の安値から急速に切り返した動きは、市場の底堅さを証明しています。
しかし、ここからが正念場です。パウエルFRB議長の口から語られる労働市場への評価、そしてワシントンD.C.から届く規制に関するニュースは、現在の強気トレンドを加速させる「燃料」になるか、あるいは冷や水を浴びせる「トリガー」になるかの分岐点にあります。
本稿では、マクロ経済環境、オンチェーンデータ、そしてテクニカル分析の観点から、この極めて重要な局面におけるトレーディング戦略を紐解きます。
1. Asset Status (現在の局面)
現在のビットコイン市場は、「イベントドリブン型の上昇トレンド回帰」の局面にあります。
- 価格動向: 90,075ドル(執筆時点)。直近安値86,000ドルからのV字回復は、押し目買い意欲の強さを示唆しています。
- 市場心理: FRBによる金利据え置きは織り込み済みであり、焦点は「今後の利下げペース」と「規制環境の好転」にシフトしています。
- ボラティリティ: インプライド・ボラティリティ(IV)は高止まりしており、イベント通過前後の乱高下が予想されます。
トランプ発言でドル急落:BTC8.9万ドル回復とFOMC前の攻防でも触れたように、為替市場におけるドル安圧力がBTCのサポート材料として機能し続けています。
2. Macro Correlation (マクロ環境との相関)
今回の局面を読み解く鍵は、「実質金利」と「規制リスクプレミアム」の2点に集約されます。
FRBと労働市場の綱引き
市場は本日のFOMCでの金利据え置きを確実視していますが、パウエル議長の記者会見が最大の変数です。
現在の失業率は4.4%まで上昇しており、労働市場の軟化が顕著です。
- ハト派シナリオ(Bullish): パウエル議長が労働市場の減速を懸念し、ハト派姿勢(利下げ示唆)を強めた場合、ドル安・株高と共にBTCは直近高値を目指すでしょう。
- タカ派シナリオ(Bearish): インフレ再燃を警戒し、引き締め長期化を示唆した場合、一時的な調整が入る可能性があります。
「デジタルゴールド」としての真価
金(ゴールド)価格がオンスあたり5,300ドルを超え、史上最高値を更新し続けています。これは法定通貨への信認低下と地政学リスクを背景とした「ハードアセット需要」の爆発を示しており、BTCにとっても強力な追い風です。
関連記事: 金5000ドル突破とBTC自律反発:FOMC直前のポジション調整
上院法案採決:規制リスクの解消
木曜日に予定されている上院農業委員会による暗号資産市場構造法案の採決は、テクニカル分析以上に重要なファンダメンタルズ要因です。
この法案が超党派の支持を得て前進すれば、機関投資家が参入を躊躇する最大の理由であった「規制の不透明性」が払拭されます。これは、単なるニュースではなく、市場構造そのものを変えるゲームチェンジャーとなり得ます。
関連記事: 米暗号資産法案「CLARITY Act」:規制明確化でCOIN株は買いか
3. On-chain / Supply Data (需給データ)
価格上昇の裏付けとなる需給データを確認します。
クジラの押し目買いと取引所フロー
オンチェーンデータプロバイダーの指標によると、BTC価格が8万6,000ドルまで下落した局面で、1,000BTC以上を保有する「クジラ」アドレスの保有量が増加しました。これは、大口投資家がこの水準を明確な「買い場」と認識したことを示しています。
資金調達率(Funding Rate)の健全化
先週の調整局面を経て、主要デリバティブ取引所のFunding Rate(資金調達率)は過熱感が解消され、フラットに近い状態に戻りました。これは、過度なレバレッジロングが一掃されたことを意味し、新たな上昇トレンドを形成するための土台が整ったと言えます。
関連記事: BTC 12億ドル流入:Goldを超える強気シグナル
4. Technical Setup (チャート分析)
BTC/USDの4時間足および日足チャートに基づくテクニカル分析です。
重要な価格レベル
- レジスタンス (上値抵抗):
- $92,000: 直近の戻り高値であり、短期的な攻防ライン。
- $93,400 – $94,000: 史上最高値圏かつ心理的節目。ここを明確にブレイクすれば「青空天井」モードへ突入。
- サポート (下値支持):
- $88,500: 20日指数平滑移動平均線(EMA)付近。短期トレンドの生命線。
- $86,000: 先週末の安値かつ強力な需要帯。ここを割ると調整が深まるリスクあり。
オシレーター分析
- RSI (相対力指数): 日足RSIは60付近で推移しており、過熱感なく上昇余地を残しています。強気ダイバージェンスの形成は確認されていませんが、モメンタムは上向きです。
- MACD: ヒストグラムが縮小傾向にあり、ゴールデンクロスが目前です。これが確定すれば、テクニカル的な買いシグナルとなります。
5. Strategy (トレード戦略)
イベント通過前後のボラティリティを利用した、短期から中期のアクティブな戦略を提案します。
シナリオA:イベントドリブン・ブレイクアウト(本命)
FRBがハト派姿勢を示し、かつ木曜日の法案採決がポジティブに進む場合の戦略です。
- エントリー: $92,000のレジスタンスを明確な実体線でブレイクした時点、もしくはFOMC後の短期的な押し目($89,500付近)。
- ターゲット: 第一目標 $94,000、第二目標 $98,000(未知の領域)。
- ストップロス: $88,000割れ(シナリオ崩壊ライン)。
シナリオB:「噂で買って事実で売る」調整
材料出尽くし、またはパウエル議長のタカ派発言による失望売りのケースです。
- エントリー: $93,000付近での上ヒゲ形成を確認後のショート、または$88,500のサポート割れ。
- ターゲット: $86,000(前回の安値)、次は$82,000付近。
- ストップロス: $94,500(最高値更新なら即撤退)。
推奨スタンス
現在は「Buy the Dip(押し目買い)」を基本戦略としつつも、イベント直後の乱高下(ダマシ)には細心の注意を払ってください。特に、トランプ次期政権による「ドル安容認」発言は、中長期的にBTCにとって追い風であり続けるため、過度なショートポジションはリスクが高いと言えます。
リスク警告:
暗号資産およびコモディティ取引は高いボラティリティを伴います。特にFOMCや法案採決などの重要イベント前後は、流動性が低下しスプレッドが拡大する恐れがあります。必ずご自身の許容できるリスク範囲内で取引を行い、逆指値(ストップロス)を徹底して資金管理を行ってください。


