2026年1月26日、金融市場に新たな歴史が刻まれました。NY先物市場において、銀(シルバー)価格がついに1トロイオンス=100ドルの大台を突破し、一時109ドルまで急騰する場面が見られました。
これまで「貧者の金(Poor Man’s Gold)」と揶揄されてきた銀ですが、産業用需要の逼迫と投機マネーの流入により、今やビットコイン(BTC)をも凌ぐボラティリティ資産へと変貌しています。
本稿では、銀価格急騰の背景と、それに連動して買われた東邦亜鉛(5707)などの個別株動向、そして今後のコモディティおよび暗号資産市場のトレード戦略について、テクニカルとマクロの両面から分析します。
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1. Asset Status:銀相場は「発見機能」のフェーズへ
現在の銀市場は、典型的な「パラボリック・ムーブ(放物線状の上昇)」を描いています。
- トレンド定義: スーパーサイクル(超強気トレンド)
- 主要レジスタンス: 青天井(Price Discovery Mode)
- ボラティリティ: 極めて高い(IVの急上昇)
1月26日の市場では、3月限が100ドルを突破した瞬間にショートカバー(空売りの買い戻し)を巻き込み、一気に109ドルまで跳ね上がりました。これは単なる上昇ではなく、長年蓄積された巨大なウェッジ(保ち合い)からの上放れであり、「価格発見機能」が働き始めたことを意味します。
これまで金(ゴールド)が5,000ドルを目指す動きの中で遅れをとっていた銀が、金銀比価(ゴールド/シルバーレシオ)の修正を一気に行っている状況です。
2. Macro Correlation:なぜ今、銀と関連株なのか?
マクロ経済環境を俯瞰すると、資金の流れ(Capital Flow)が「ペーパーアセット」から「ハードアセット」へ急速にシフトしていることが分かります。
実質金利とインフレヘッジ
米国の金利政策が不透明な中、市場は「インフレの再燃」または「通貨価値の希薄化」を織り込み始めています。通常、金利上昇局面では貴金属は売られやすいですが、現在の相場は「金利がつかないことによる機会損失」よりも「通貨を持っていることのリスク」を重視しています。
BTC vs Silver:デジタルとアナログの覇権争い
暗号資産ストラテジストとして注目すべきは、ビットコイン(BTC)と銀の相関です。本来「デジタルゴールド」として機能すべきBTCが、直近では上値の重い展開となっています。
- BTC: 9万ドルの壁に阻まれ、調整色が強い。
- Silver: 産業需要(EV、AI半導体、太陽光パネル)という「実需」の裏付けがあるため、投機資金が入りやすい。
機関投資家は現在、規制リスクやテクノロジーリスクのあるBTCよりも、在庫不足が明白なコモディティ市場でのモメンタムトレードを選好しています。
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3. Market Movers:昨日動いた個別株の「選別」
銀価格の高騰は、株式市場における「関連銘柄」への資金流入を加速させました。しかし、1月26日の相場は単なる全面高ではなく、材料に基づいた冷徹な「選別」が行われました。
東邦亜鉛(5707):製錬マージン拡大への期待
最も恩恵を受けたのは、製錬大手の東邦亜鉛です。前日比+10.06%(1,904円)という急騰を見せました。
- 上昇理由: 銀価格の上昇は、同社の亜鉛・鉛精鉱に含まれる銀の「副産物収入」を直撃し、製錬マージンを大幅に押し上げます。住友金属鉱山などが銅・金価格で買われるのと同様のロジックです。
- 需給: 空売り残高の積み上がりに対する踏み上げ(Short Squeeze)も観測されました。
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明暗を分けたその他の銘柄
一方で、市況環境が良くても個別要因で売られる銘柄が目立ちました。
- セグエグループ(3968): 前日比-11.86%。460万株の公募増資・売出しを発表。EPS(1株当たり利益)の希薄化は、どのような強気相場でも嫌気される典型例です。
- 富士通(6702): 前日比-7.83%。UBS証券による投資判断引き下げ(Buy→Neutral)がトリガー。主力株への利食い売りは、資金が「バリュー株・資源株」へシフトしている証拠でもあります。
- アステリア(3853): 前日比+10.68%。SpaceXへの出資実績が材料視されました。「宇宙」は希少資源の獲得競争という文脈で、コモディティ相場と親和性が高いテーマです。
4. Technical Setup:チャート分析
Silver (XAG/USD)
銀価格のチャートは「未知の領域」に入っています。
- RSI (14): 日足レベルで85を超えており、極度の過熱感を示唆。
- サポートライン: かつての心理的抵抗線であった100ドルが、今後は強力なサポート(岩盤)として機能するかが焦点です。
- 注意点: 100ドルを明確に下回った場合、ロング勢の投げ売り(Stop Loss hunt)により、90ドル台前半まで急落する「行って来い」のリスクがあります。
東邦亜鉛(5707)
- ギャップアップ: 巨大な窓を開けての上昇。
- 出来高: 急増しており、機関投資家の参入を示唆。
- 移動平均線: 全ての主要移動平均線(25MA, 75MA, 200MA)を上回る「パーフェクトオーダー」形成間近。
5. Strategy:トレーディング戦略
ボラティリティを利益に変えるスペキュレーターとしての戦略を提示します。
シナリオA:銀の押し目買い(Dip Buying)
銀価格が一時的な調整で100ドル〜102ドルのゾーンまで下落した場合、そこは絶好のロングエントリーポイントとなります。
- Entry: 101.50ドル付近
- Stop Loss: 98.00ドル(100ドル割れ定着で撤退)
- Target: 115ドル〜120ドル
シナリオB:資源株への循環物色
東邦亜鉛のような「銀関連」が急騰した後、次に資金が向かう先を探します。
* 出遅れ資源株: まだ高値を更新していない非鉄金属セクター。
* リサイクル関連: アサカ理研(5724)や松田産業(7456)など、都市鉱山から貴金属を回収する企業の収益性も向上します。これらがまだ動意付いていなければチャンスです。
シナリオC:BTCのリバウンド狙い(逆張り)
資金がコモディティに吸われている現在、BTCは相対的に割安になる可能性があります。銀相場が一服し、利益確定された資金が再びデジタルアセットに戻るタイミング(ローテーション)を監視します。
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リスク警告
コモディティ市場、特に銀相場は「悪魔の金属」と呼ばれるほどボラティリティが高く、短期間で資産を大きく毀損する可能性があります。レバレッジ管理を徹底し、必ず逆指値(ストップロス)を設定した上でトレードに臨んでください。本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。


