2026年1月、金融市場は歴史的な局面を迎えています。金(Gold)価格はオンスあたり5,000ドルの大台に肉薄し、銀(Silver)も97ドル台という記録的な高値を更新しました。インド市場(MCX)では金が16万ルピー、銀が34万ルピー(※想定換算値)に達するなど、実需と投機が入り混じる熱狂的な相場が展開されています。
本稿では、グリーンランド情勢をはじめとする地政学リスクと、目前に迫った米連邦公開市場委員会(FOMC)を背景に、コモディティ市場のテクニカル分析と、それが暗号資産(ビットコイン)に与える影響、そしてトレーダーが取るべき戦略を解説します。
1. Asset Status (現在の局面)
スーパーサイクルの加速
現在、貴金属セクターは完全な「価格発見機能(Price Discovery)」のモードに入っています。レジスタンスライン(上値抵抗線)が存在しない青天井の相場であり、典型的なパラボリック(放物線状)な上昇トレンドを形成しています。
- ゴールド: スポット価格は一時4,966.59ドルを記録。5,000ドルという心理的節目を前に、ショートカバー(空売りの買い戻し)を巻き込みながら上昇中。
- シルバー: 金価格の上昇に遅れて追随する形で、ボラティリティを高めながら97.44ドルまで急騰。金銀比価(Gold/Silver Ratio)の縮小が進んでいます。
- ビットコイン: 一方で、暗号資産市場はコモディティへの資金流出(キャピタル・フライト)の影響を受けており、明確なデカップリング(連動性の乖離)が発生しています。
関連記事: ゴールド5000ドル接近でBTC独歩安:米GDP好調が生む資金流出の構図
2. Macro Correlation (マクロ環境との相関)
地政学リスクと「安全資産」の再定義
市場を動かしている最大の要因は、グリーンランドの領有権および資源開発を巡る米・NATO対露・中の緊張激化です。
従来の「有事のドル買い」は機能不全に陥っています。対立軸の中心に米国がいるため、米ドルの信認そのものが揺らぎ、無国籍通貨であるゴールドへの逃避が加速しています。これに対し、ビットコインは依然としてNasdaqなどのハイテク株との相関が残っており、「デジタルゴールド」としての地位を確立しきれていないのが現状です。
1月27日 FOMCと金利見通し
1月27日に予定されているFOMCでの利下げ観測も、貴金属価格を強力にサポートしています。
実質金利の低下は、利息を生まない資産(金・銀)の相対的な魅力を高めます。しかし、市場はすでに利下げを織り込み済みであるため、パウエル議長の発言次第では「事実売り(Sell the fact)」による急落リスクも孕んでいます。
以前の記事、【金vsドル】パウエル召喚で4600ドル突破の衝撃でも触れた通り、米ドルの信認低下がゴールドのパラボリックな上昇の根源にあります。
3. On-chain / Supply Data (需給データ)
中央銀行と実需の動向
ゴールドマン・サックスは2026年末の金価格ターゲットを5,400ドルへ上方修正しました。この背景には、新興国中央銀行による「外貨準備の脱ドル化」という構造的な買い需要があります。これは短期的な投機ではなく、長期的なフロア(価格の下支え)として機能します。
インド市場(MCX)の熱狂
インド国内の商品先物市場(MCX)では、金が159,226ルピー(+2.0%)、銀が大幅上昇を見せています。結婚シーズンや祝祭需要に加え、現地通貨ルピー安へのヘッジとして現物買いが殺到しており、これがグローバル価格の「押し目」を浅くしています。
シルバーETFのボラティリティ
銀に関しては、ETFフローの激しい出入りに注意が必要です。銀ETF20%暴落 vs 実需:投機熱狂の終焉で解説したように、投機的なポジションの巻き戻しは一瞬で起こります。しかし、太陽光パネルやEV向けの工業需要が逼迫している事実は変わらず、下値での実需買いは堅調です。
4. Technical Setup (チャート分析)
Gold (XAU/USD)
- トレンド: 超強気(Strong Bullish)
- 重要レジスタンス: $5,000(サイコロジカルライン)、$5,400(ゴールドマン・サックス目標値)
- サポートライン: $4,850(短期MA)、$4,600(前回ブレイクアウト地点)
- インジケーター: RSIは80を超えており過熱感がありますが、パラボリック局面では90付近まで張り付くことも珍しくありません。「買われすぎ」を理由にした安易な逆張りは自殺行為です。
Silver (XAG/USD)
- トレンド: 急伸(Parabolic)
- 重要レジスタンス: $100.00
- サポートライン: $90.00、$84.50
- 特記事項: ボラティリティはゴールドの約2倍です。日中変動率が5%を超えることも想定してポジションサイズを管理する必要があります。
Bitcoin (BTC/USD)
- トレンド: レンジ / 調整含み
- 相関: ゴールドとの逆相関が強まっています。資金がコモディティへ流れている間、BTCの上値は重くなる傾向があります。
- 注目ポイント: コモディティ価格が一服した際、その利益(Profit Taking)が暗号資産市場へ還流してくるタイミングを見極める必要があります。
5. Strategy (トレード戦略)
現在の市場環境における推奨戦略は以下の通りです。
コモディティ(Gold/Silver)戦略
- 順張り(Trend Following):
- 基本はロング継続です。ただし、5,000ドル手前での乱高下に注意してください。
- MCX基準: インド市場の金先物が150,000ルピーを維持する限り、構造的な強気トレンドは崩れていません。押し目(Dip)は買い場となります。
- イベントドリブン:
- 1月27日のFOMC直後は、アルゴリズムによる乱高下が予想されます。ポジションを軽くするか、広めのストップロスを設定してください。
暗号資産(Crypto)戦略
- 循環物色の待機:
- 現在、資金は「デジタル」から「フィジカル」へ移動しています。しかし、ゴールドがピークアウトした瞬間、BTCへの急激な資金回帰(Rotation)が起こる可能性があります。
- VIX指数(恐怖指数)の急騰時には、BTCも一時的に売られる可能性があります。トランプ関税発言でVIX急騰の記事で触れたように、全資産売りのリスクオフ局面には警戒してください。
リスク管理(重要)
現在の相場は、地政学ヘッドライン一つで数%動くボラティリティを持っています。レバレッジは通常時の半分以下に抑え、強制ロスカットを回避する資金管理を徹底してください。特に銀(Silver)のショートは、踏み上げ(Squeeze)のリスクが極めて高いため推奨しません。
免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。暗号資産およびコモディティ取引には高いリスクが伴います。投資判断はご自身の責任で行ってください。


