機関投資家による「現物買い」が止まりません。ビットコイン(BTC)現物ETFへの週間純流入額が12億ドル(約1,800億円)を突破し、市場構造に地殻変動が起きています。
これまでの常識では、米金利上昇は暗号資産(仮想通貨)やゴールド(金)といった「金利を生まない資産」にとって逆風でした。しかし、現在のBTCはそのマクロ相関を無視するかのように底堅さを維持しています。
本稿では、最新のETFフローデータとオンチェーン分析を基に、なぜこの12億ドルの流入が「単なる買い」ではなく、次の爆発的な上昇トレンドへの号砲となるのかを解説します。また、コモディティ市場の王者であるゴールドとの比較を交え、アクティブトレーダーが狙うべきセットアップを提示します。
1. Asset Status(現在の局面)
現在のビットコイン市場は、「強気トレンド内での高値保ち合い(Consolidation)」と定義できます。
直近の高値更新後、短期的な過熱感を冷ますための調整局面に入っていますが、下値は極めて限定的です。特筆すべきは、売り圧力を吸収するスピードの速さです。
市場構造の変化
- レンジ: 94,000ドル ~ 98,500ドル
- モメンタム: 中立~やや強気
- 主要テーマ: 機関投資家の押し目買い(Dip Buying) vs マクロ経済の不確実性
これまでのサイクルと決定的に異なるのは、下落局面でパニック売りが発生するのではなく、ETF経由の待機資金が即座にフロア(底値)を形成している点です。
関連記事: 米法案延期でBTC反落:17億ドルETF流入vs金利上昇の攻防の記事でも触れた通り、直近では法案延期というネガティブサプライズで一時的な急落を見せましたが、その際も巨額の資金流入が下支えとなりました。
2. Macro Correlation(マクロ環境との相関)
マクロ経済の視点では、「米ドル(USD)」「実質金利」との相関関係にデカップリング(乖離)の兆候が見られます。
金利上昇を消化する「デジタルゴールド」
通常、米連邦準備制度理事会(Fed)によるタカ派的な姿勢や、堅調な経済指標による米長期金利の上昇は、リスク資産のバリュエーションを押し下げます。しかし、現在のBTCは以下のナラティブにより、この重力を振り払いつつあります。
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法定通貨の信認低下:
米国の債務上限問題や財政赤字拡大懸念がくすぶる中、ゴールドと同様に「発行体がなく、供給量がプログラムされた資産」への逃避需要が継続しています。 -
Goldとの連動性:
ゴールドもまた、ドル高・金利高の中で史上最高値圏を維持しています。これは市場が「インフレ再燃」あるいは「地政学リスク」を織り込んでいる証拠です。BTCはこの動きに追随しており、従来の「ハイテク株連動(ナスダック相関)」から「コモディティ連動」へと性質をシフトさせています。
ドル指数(DXY)の動向
DXYが103-104近辺で底堅く推移しているにもかかわらず、BTCが崩れない事実は、ドル建て資産としてのBTCの需要が「ドルの強さ」を上回っていることを示唆しています。
3. On-chain / Supply Data(需給データ)
テクニカル分析だけでは見えない、市場の「基礎体力」をオンチェーンデータから読み解きます。今回の12億ドル流入が持つ意味は、単なる額面以上のものです。
ETFフローとOTCデスクの枯渇
ブラックロック(IBIT)やフィデリティ(FBTC)を中心とした現物ETFへの12億ドル流入は、マイナーが1週間に生産するBTCの量を遥かに凌駕しています。
- 供給ショック:
ETF発行体は、流入した資金相当分の現物を市場(主にCoinbase等のOTCデスク)から調達する必要があります。OTCデスクの在庫が枯渇し始めると、調達圧力はオーダーブック(板)に直接波及し、価格を急激に押し上げます。
クジラとリテール(小口)の乖離
- クジラ(1,000 BTC以上保有):
保有量を増加傾向。特に「新しいクジラ(ETFカストディアン)」のアドレス残高が急増しています。 - リテール:
Google検索トレンドなどの指標は依然として低水準です。これは、現在の相場が「個人の熱狂(FOMO)」ではなく、「機関投資家の冷徹なアロケーション」によって主導されていることを意味します。この段階での上昇は、崩れにくい傾向があります。
デリバティブ市場の健全性
- ファンディングレート(資金調達率):
価格が高値圏にあるにもかかわらず、ファンディングレートは過度なプラス乖離(ロング過多)を示していません。 - OI(未決済建玉):
OIは高水準ですが、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)主導の増加であり、これはヘッジファンド等のベーシス取引(現物買い・先物売り)を含んでいるため、必ずしも投機的なロングポジションの積み上がりだけを意味しません。
4. Technical Setup(チャート分析)
ここからは具体的なプライスアクションの分析に入ります。
主要な価格レベル
現在、BTCは日足レベルでアセンディングトライアングル(上昇三角持ち合い)に近い形状を形成しつつあります。
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レジスタンス(上値抵抗): $98,500 – $100,000
心理的節目となる10万ドルの手前には、オプション市場の売り壁(Gamma Wall)が観測されます。ここを明確にブレイクするには、スポット市場での強力な出来高が必要です。 -
サポート(下値支持): $94,000 – $95,500
前述の記事で触れた調整時の安値($95,688周辺)が、現在は強力なサポートラインに転換しています。また、4時間足の200期間移動平均線(EMA)もこの水準に上昇してきており、テクニカル的な需要が重なるポイントです。
オシレーター分析
- RSI (14):
日足RSIは60付近で推移。買われすぎ水準(70以上)には達しておらず、上昇余地(Headroom)が残されています。 - MACD:
ゼロライン上での強気クロスが示現しそうな形状です。これが確定すれば、再度のモメンタム加速のサインとなります。
5. Strategy(トレード戦略)
以上の分析に基づき、ボラティリティを味方につけるための具体的なトレード戦略を提案します。
シナリオA:押し目買い(Dip Buying)
現在のレンジ内での反発を狙う戦略です。ETFフローが継続している限り、深い押し目は期待しにくいため、浅いサポートでのエントリーを検討します。
- Entry: $95,800 – $96,500(サポートラインへのリテスト)
- Stop Loss: $93,800(直近安値割れ&4時間足トレンド崩壊)
- Target: $99,500(レジスタンス手前)
シナリオB:ブレイクアウト(Breakout)
10万ドルの心理的壁を突破する瞬間のボラティリティを狙います。ただし、ダマシ(Fakeout)に注意が必要です。
- Entry: $100,200(明確な日足終値ブレイクを確認後)
- Stop Loss: $98,000(ブレイクポイントへの回帰失敗)
- Target: $115,000(フィボナッチ・エクステンションによる次の節目)
ゴールド(XAU/USD)とのペアトレード
リスクヘッジとして、BTCロングと同時にGoldをショート、あるいはその逆を行う戦略は推奨しません。現在は両資産とも「対法定通貨」での上昇トレンドにあるため、相関が高く、ヘッジ効果が薄れています。むしろ、「BTCロング + ドル円ショート」のような、ドル安方向へのベットがシナリオと整合的です。
リスク警告とまとめ
今回の12億ドルのETF流入は、ビットコインが「投機的なおもちゃ」から「機関投資家のポートフォリオの一部」へと完全に変貌したことを示すシグナルです。供給不足が構造化する中で、価格上昇圧力は高まっています。
しかし、以下のリスクには常に警戒してください。
- レバレッジリスク:
ボラティリティが高いため、過度なレバレッジは強制ロスカットの餌食となります。資金管理(ポジションサイジング)を最優先してください。 - マクロショック:
予期せぬインフレ指標の上振れや、地政学リスクの急激な悪化は、一時的に全ての資産クラスを現金化(Cash is King)する動きに繋がる可能性があります。
市場のノイズに惑わされず、オンチェーンデータと「資金の流れ」に注目し続けることが、この強気相場を乗りこなす鍵となります。


