12月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想通りの前年比+2.7%で着地したことを受け、ビットコイン(BTC)は一時92,800ドルを突破しました。市場が懸念していたインフレの再燃リスクが一旦後退したことは安心感を与えましたが、現在の相場を動かしている真のドライバーは、単なる経済指標ではありません。
パウエルFRB議長に対する司法省(DOJ)の介入懸念が、「中央銀行の独立性」という現代金融システムの根幹を揺るがしています。これにより、法定通貨システムに依存しない「非国家資産」としてのBTCやゴールドへの選好が強まっています。
本稿では、CPI通過後のマクロ環境の変化と、94,000ドルのレジスタンス攻略に向けたテクニカル分析、そしてこの混乱期における具体的なトレード戦略を解説します。
1. Asset Status (現在の局面)
現在のビットコイン市場は、中期的な「強気アセンディング(上昇)への回帰を試すレンジ局面」にあります。
- 長期トレンド: 2025年10月に記録した史上最高値(ATH)約126,000ドルからの調整フェーズ。
- 短期トレンド: 87,000ドルを強固なサポートとし、94,000ドルのレンジ上限をブレイクしようとする「煮詰まり」の状態。
- モメンタム: CPI通過による不透明感の払拭と、制度的リスク(FRB問題)による逃避需要が重なり、買い圧力が優勢。
MSTR巨額買いvs米CPI警戒:BTC9.1万ドル攻防と金利4.19%でも触れたように、91,000ドル台での攻防を制したことで、市場心理は「様子見」から「押し目買い」へとシフトしています。
2. Macro Correlation (マクロ環境との相関)
マクロ環境は、従来の「金利相関」から「体制リスクヘッジ」へとナラティブが変容しつつあります。
インフレ指標と金利の乖離
12月CPI(総合+2.7%、コア+2.6%)はFRBのインフレ抑制が順調であることを示唆し、米10年債利回りは4.175%へ低下しました。通常、金利低下はリスク資産(株・クリプト)にとって追い風ですが、ゴールドマン・サックスが利下げ開始時期を「2026年後半」へ後ずれ予測するなど、金融緩和への道のりは依然として不透明です。
「中央銀行の独立性」の危機
特筆すべきは、パウエル議長と司法省の対立です。パウエル氏捜査で激震:米株・債券・ドル「トリプル安」の警鐘で解説した通り、FRBの政治的独立性が脅かされる事態は、米ドル(USD)の信認低下(De-dollarization)を招きます。
この文脈において、ビットコインは以下の二つの性質を同時に発揮し始めています。
- リスクオン資産: ソフトランディング期待による株高への追随。
- デジタルゴールド: 国家権力や金融政策の失敗から隔離された「安全資産」。
実際に、【金vsドル】パウエル召喚で4600ドル突破の衝撃で見られるゴールド価格の急騰とBTCの堅調さは、投資家が「法定通貨の希釈化」と「制度的カオス」の両方をヘッジしようとしている証左です。
3. On-chain / Supply Data (需給データ)
オンチェーンデータは、大口投資家(クジラ)による「静かなる蓄積」を示唆しています。
ホルダーの行動変容
- Exchange Net Flow: 取引所からの純流出(Outflow)が継続しており、売り圧力が限定的であることを示しています。特に88,000ドル〜90,000ドルのゾーンでは、現物主導の買い支えが確認されています。
- 建玉(Open Interest): 先物市場の建玉は増加傾向にありますが、Funding Rate(資金調達率)は極端な過熱感を示していません。これは、現在の92,000ドル台の上昇が、過度なレバレッジによる投機ではなく、実需や現物ヘッジを伴うものである可能性が高いことを意味します。
マイナーの動向
半減期後の調整を経て、ハッシュレートは高水準で安定しています。マイナーの降伏(Capitulation)フェーズは過ぎ去り、現在の価格帯はマイニング収益分岐点を十分に上回っているため、彼らによる強制的な売り圧力は懸念されにくい状況です。
4. Technical Setup (チャート分析)
BTC/USDの日足チャートに基づき、重要な価格レベルを分析します。
主要な価格レベル
- レジスタンス (R1): $94,000 – $94,500
- 直近のレンジ上限であり、ここを明確に日足終値で超えられるかが最大の焦点です。このラインにはショートカバーを誘発するストップロスが大量に溜まっています。
- レジスタンス (R2): $98,000 – $100,000
- 心理的節目であり、R1突破後の次のターゲット。
- サポート (S1): $87,000 – $88,000
- レンジ下限かつ、短期移動平均線が集中する防衛ライン。米金利4.17%へ急低下:CPI待機でBTC9万ドル死守の「静かなる貪欲」でも指摘した通り、この水準での買い意欲は旺盛です。
インジケーター分析
- RSI (相対力指数): 日足RSIは60付近で推移しており、買われすぎ水準(70以上)には達していません。上昇余地は十分にあります。
- Bollinger Bands: バンド幅が収縮(スクイーズ)しており、ボラティリティの爆発が近いことを示唆しています。パウエル報道などのヘッドライン次第で、上下いずれかに大きく放たれる可能性があります。
5. Strategy (トレード戦略)
現在のボラティリティとマクロ環境を踏まえた、アクティブトレーダー向けの戦略を提案します。
シナリオA:レンジブレイク狙い(順張り)
最も期待値が高いのは、94,000ドルの壁を突破した際のモメンタムに乗る戦略です。
- Entry: $94,200付近へのブレイクアウト確認後、またはブレイク後のリテスト時。
- Target: $98,500(第1目標)、$103,000(第2目標)。
- Stop Loss: $91,800(ブレイク失敗によるダマシ回避のため、レンジ内に戻ったら即撤退)。
シナリオB:レンジ内での押し目買い
レンジ継続を前提とし、下限引きつけを行う戦略です。
- Entry: $88,500 – $89,500ゾーン。
- Target: $93,000 – $94,000。
- Stop Loss: $86,500(明確なサポート割れでカット)。
リスク管理と注意点
今回の相場上昇は「FRBの独立性危機」という極めて政治的な材料を含んでいます。万が一、DOJとFRBの間で手打ちが行われたり、パウエル議長の地位が安泰であるとの報道が出た場合、「安全資産プレミアム」が剥落し、急落するリスクがあります。
また、トランプ発言で「米国売り」:金急騰・VIX上昇とCPIへの警戒にあるように、VIX指数(恐怖指数)の上昇は、突発的な全資産投げ売り(Cash is King)を誘発する可能性もゼロではありません。
必ずストップロスを設定し、資金管理を徹底した上で、この歴史的な相場変動に臨んでください。
免責事項: 本記事は情報提供のみを目的としており、投資助言ではありません。暗号資産(仮想通貨)やコモディティ取引は高いリスクを伴います。投資決定はご自身の判断と責任において行ってください。


