1. 【市場概況】 (Market Overview)
本週(1/4-1/11)のグローバル市場は、「Extreme Greed(極度の強気)」の色を強めつつも、その質が大きく変化した1週間でした。
S&P500は6,966ポイント、Nasdaqは23,671ポイントといずれも史上最高値圏で終了し、日経平均も52,000円を目前に捉えています。この「株高・金利安」という理想的なゴルディロックス(適温相場)を演出したのは、単なる経済指標の結果ではなく、トランプ次期政権による強力な「政策介入」です。
| 指数/資産 | 価格/値 | 前日比/変化 | トレンド判断 |
|---|---|---|---|
| S&P 500 | 6,966.28 | +0.65% | Strong Bull |
| US 10Y Yield | 4.17% | -0.29% | Bearish (金利低下) |
| VIX指数 | 14.49 | -6.21% | Risk-on |
| Bitcoin | $90,311 | -0.22% | Neutral/Bullish |
| 上海総合指数 | 4,120.43 | +0.92% | Extreme Overbought |
市場を動かした最大のドライバーは、雇用統計の軟化(NFP+5万人)と、トランプ大統領による「住宅ローン担保証券(MBS)2000億ドル購入指示」というサプライズです。これにより米10年債利回りは4.17%へ急低下し、ハイテク株や住宅関連株のバリュエーションを一気に押し上げました。一方で、イラン情勢の緊迫化や、中国市場の異常過熱(RSI 99)など、無視できないテールリスクも蓄積されています。
2. 【詳細分析】 (Deep Dive)
今週の重要ニュースを「政策」「地政学」「構造変化」の3つの軸で深掘りします。
2.1. 米国政策:トランプ・トレードの「第2章」始動
これまでのトランプ・トレードは「規制緩和への期待」が主軸でしたが、今週は「直接介入による価格形成」へとフェーズが移行しました。
住宅市場への実弾介入と建設株の好機
トランプ大統領によるMBS購入指示は、市場金利を強制的に押し下げる「イールドカーブ・コントロール(YCC)」に近い効果をもたらしました。30年固定金利が5.99%へ急落したことで、D.R.ホートン(DHI)などの住宅建設株には、需要喚起と販促コスト削減(利益率改善)のダブルメリットが発生しています。これは短期的な材料にとどまらず、中期的なEPS(一株当たり利益)の上方修正要因となります。
銀行株への逆風:クレカ金利10%案
一方で、金融セクターには冷や水が浴びせられました。クレジットカード金利を一時的に10%に制限するという提案は、JPモルガン(JPM)やキャピタル・ワン(COF)の収益の柱(高マージン部門)を直撃します。市場はこれを「ポピュリズム・リスク」として認識し始めており、特にサブプライム層への露出が高いカード専業株は「売り」対象へと転落しました。
インテルの「国策銘柄」化
インテル(INTC)の10%急騰は、CEOとトランプ氏の会談により、同社が「米国の戦略資産」として認定されたことを意味します。政府保有株の含み益がアピール材料となっている点は、今後のさらなる支援策(公共調達や補助金)を示唆しており、TSMC一強体制へのカウンターとして再評価が進んでいます。
2.2. 中国市場:RSI 99の「異常過熱」とデフレの混在
上海総合指数がRSI 98.8という統計的な異常値を示している点は、極めて警戒が必要です。
資産インフレと実体経済の乖離
株価は「半導体国産化」や「人民元高(6.98元)」を好感して爆騰していますが、実体経済を示す12月PPI(生産者物価指数)は-1.9%とデフレが継続しています。CPIの上昇も天候要因による一時的なものであり、企業の利益環境は依然として過酷です。現在の株高は、実需を伴わない「流動性主導のモメンタム相場」である可能性が高く、梯子が外された際の反動安リスクは極大化しています。
2.3. 日本市場:インバウンド神話の崩壊と5.2万への道
日経平均は52,000円を視界に捉えていますが、その内実は二極化しています。
「脱・中国依存」を迫られるインバウンド銘柄
2026年の訪日中国人客が「ほぼ半減」するという予測データは、百貨店や空運株にとって衝撃的なネガティブサプライズです。政治的背景による「日本回避」は構造的なものであり、三越伊勢丹などの高単価消費依存銘柄は、PERの切り下げ(デレーティング)を余儀なくされるでしょう。
ハイテク・輸出株への資金集中
一方で、米金利低下と円安(157円台)の共存という好環境が、半導体や輸出関連株を押し上げています。インバウンド関連から抜けた資金が、これら「稼ぐ力」のあるセクターへローテーションしています。
2.4. 地政学リスク:イラン情勢とコモディティ
イラン国内の「社会革命」リスクと、それに伴う「輸送拠点攻撃」の警告は、エネルギー供給網への重大な脅威です。市場はまだこのリスクを十分に織り込んでいませんが、銅価格の1.3万ドル突破(グレンコア/リオ・ティント合併観測も寄与)や金価格の高値更新は、スマートマネーが実物資産へ避難し始めていることを示唆しています。
3. 【注目ライン】 (Key Levels)
来週の市場動向を占う上で、極めて重要なテクニカルポイントです。
| 対象 | 重要ライン | 意味合い |
|---|---|---|
| S&P 500 | 7,000 | 心理的な最大節目。ここを突破すれば青天井だが、達成感による利食い場になりやすい。 |
| US 10Y Yield | 4.10% | 下値支持線。ここを割り込むにはさらなるインフレ鎮静化の証拠が必要。 |
| 日経平均 | 52,000円 | 未踏の領域。ブレイクすればショートカバー加速だが、51,000円割れは調整入りのサイン。 |
| Bitcoin | $90,000 | 岩盤サポート。ここを維持できるかが$100kトライへの必須条件。 |
| WTI原油 | $80.00 | レンジ上限。イラン情勢悪化でここを超えれば$90まで真空地帯。 |
4. 【シナリオ分析】 (Scenarios)
来週のCPI(消費者物価指数)と銀行決算が最大のカタリストとなります。
4.1. 強気シナリオ (Bull Case)
- 条件: 米CPIが市場予想通りか下振れし、インフレ再燃懸念が後退する。同時に、JPモルガン等の決算で「貸倒引当金」の急増が見られず、ソフトランディング期待が維持される。
- 展開: 米金利の4.1%台定着を確認し、S&P500は7,000ポイントを突破。日経平均も52,500円を目指す。BTCは92,000ドルを超えて再加速。
4.2. 弱気シナリオ (Bear Case)
- 条件: 「賃金上昇(+3.8%)」や「MBS購入による流動性」がインフレを再燃させ、CPIが上振れる。 あるいは、イラン情勢が激化しホルムズ海峡リスクが顕在化する。
- 展開: 「金利急騰×株安」の逆回転が発生。VIXが16を超えて上昇し、ハイテク株中心に5〜8%程度の急調整が入る。上海市場のバブル崩壊が重なれば、リスクオフの連鎖が起きる。
5. 【投資戦略】 (Actionable Insights)
現在の相場は「官製相場」による強気トレンドですが、過熱感と地政学リスクが同居しています。フルレバレッジでの高値追いは避け、選別的なポジション構築を推奨します。
5.1. 推奨スタンス:Buy Dips & Sector Rotation
-
買い (Long):
- 住宅建設 (Homebuilders): DHI, LEN。金利低下の恩恵が構造的利益増につながる。
- 米国半導体 (US Semis): INTC, NVIDIA。国策銘柄としてのプレミアム取り。
- コモディティ (Commodities): Gold (GLD), 銅関連 (FCX)。インフレ再燃と地政学リスクへのヘッジとして必須。
- 日本株 (Japan): 半導体・輸出関連。円安メリットを享受できる銘柄へ集中。
-
売り/回避 (Avoid/Sell):
- 米カードローン関連: COF, SYF。規制リスクが消えるまで触らない。
- 日本百貨店・空運: 中国インバウンド依存度が高い銘柄は戻り売り。
- 中国株全般: RSI 99での新規買いは自殺行為。既存ポジションの利食いを優先し、押し目を待つ。
5.2. 来週のアクションプラン
- 火曜 (JPM決算): 銀行のガイダンスを確認。特にNII(純金利収入)とクレジットコストに注目し、悪ければ金融セクターからハイテク/ヘルスケアへの資金シフトを検討。
- 木曜 (米CPI): ここが最大の山場。イベント前にハイテク株の一部利益確定を行い、キャッシュポジションを少し高めておくのが賢明。CPI通過で金利低下トレンドが崩れなければ、再びリスクオンで攻める。
- 常時監視: WTI原油価格。$80を超えて急騰し始めたら、即座に株のポジションを落とし、エネルギー・防衛株へシフトする準備を。


