投資家の皆様、おはようございます。シニア・ストラテジストです。
2026年の幕開けとなる第1週、市場は「期待」と「警戒」が複雑に交錯するスタートを切りました。株式市場は史上最高値圏での推移を維持する一方で、米長期金利の上昇がハイテク株の重石となっています。
本日のレポートでは、今週末に控える重要イベント「雇用統計」のインプリケーションと、ビットコイン9万ドル突破に見るリスクマネーの潮流、そして「EVの冬」と「AIの春」というセクター間の鮮明なコントラストを分析し、次の一手を提示します。
1. 市場概況 (Market Overview)
本日の市場ムードは「選別的リスクオン (Selective Risk-On)」と定義します。
指数全体を無差別に買うフェーズは終了し、明確なカタリスト(材料)を持つセクターへ資金が集中する展開です。
市場を動かす最大のドライバーは以下の2点です。
1. 「ゴルディロックス」への期待と金利の壁: 今週金曜日の米雇用統計に対する楽観(適度な軟化)がある一方で、米10年債利回りが4.19%へ上昇し、ハイテク株のバリュエーション調整圧力が強まっています。
2. クリプト市場のデカップリング: 金利上昇を無視する形でビットコイン(BTC)が9万ドルを回復。伝統的金融市場(TradFi)からの資金流入期待が継続しています。
2. 詳細分析 (Deep Dive)
今週の市場動向を決定づける3つの重要テーマを深掘りします。
2.1 12月雇用統計:市場が望む「+5.5万人」の意味
今週金曜日に発表される12月雇用統計は、2026年第1四半期の方向性を決定づける最重要イベントです。市場コンセンサスは以下の通りです。
| 指標 | 市場予想 (Consensus) | 前月結果 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 非農業部門雇用者数 | +5.5万人 | +6.4万人 | 緩やかな正常化 |
| 失業率 | 4.5% | 4.6% | 完全雇用近辺で安定 |
| 平均時給 (前年比) | 横ばい | — | インフレ圧力なし |
ストラテジストの視点:
市場にとってのベストシナリオは、予想通り「+5.5万人」前後での着地です。これは経済が崩壊(リセッション)せず、かつFRBに利下げを急がせるほど悪化もしていない「適温(Goldilocks)」を示唆します。
しかし、リスクは上振れ(+15万人超)にあります。その場合、現在4.19%にある米10年債利回りが4.3%を試す展開となり、S&P 500のPER調整(株価下落)を招くでしょう。
2.2 セクターの明暗:Baidu急騰とTeslaの失速
2026年のテーマは「AI実装」と「EVの選別」であることが、年始の動きで明確になりました。
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Baidu (BIDU) のAI半導体IPO (+20.4%):
中国検索大手BaiduがAIチップ部門「Kunlunxin」をスピンオフ上場させる計画は、同社が「中国のNVIDIA」としての評価を獲得するトリガーとなりました。これは、ソフトウェア企業がハードウェア(AIインフラ)の価値を内包している場合の再評価(Re-rating)の好例です。 -
Tesla (TSLA) の納車未達 (-16%):
対照的に、Teslaの2025年Q4納車台数は前年同期比16%減と期待を裏切りました。サムスンSDIの「2026年末まで赤字」予測と合わせ、EVセクターは「冬の時代」に入っています。投資家の資金は、需要が不透明なEVから、設備投資が確実なAIインフラへとシフトしています。
2.3 ビットコイン9万ドル回復と地政学リスク
ベネズエラのマドゥロ大統領拘束という地政学的サプライズに対し、原油市場は冷静(トランプ氏の供給維持発言により)でしたが、暗号資産市場は「無国籍資産」としての価値を再認識しました。
BTCが9万ドルを、ETHが3,000ドルを維持している事実は、ETFからの流出(機関投資家の利食い)を、Tether社や国家レベルの買い(実需)が吸収していることを示しています。金利高にもかかわらずVIX指数が14台で安定していることも、リスク資産全体の下支え要因です。
3. 注目ライン (Key Levels)
現在の市場価格と、トレーダーが意識すべき重要な節目(サポート/レジスタンス)を整理します。
| 資産 (Ticker) | 現在値 | サポート (下値目処) | レジスタンス (上値抵抗) | トレンド判断 |
|---|---|---|---|---|
| S&P 500 (SPX) | 6,858 | 6,800 (心理的節目) | 6,900 (史上最高値圏) | 中立 (高値揉み合い) |
| USD/JPY | 156.84 | 155.00 (岩盤支持) | 157.50 (直近高値) | 上昇 (円安継続) |
| Bitcoin (BTC) | $90,110 | $88,500 (短期Floor) | $93,500 (ATH付近) | 強気 (ブレイクアウト) |
| US 10Y Yield | 4.19% | 4.10% | 4.25% (危険水域) | 上昇警戒 |
| Nikkei 225 | 50,339 | 49,800 | 51,000 | 強気 (円安恩恵) |
解説:
特に注目すべきは米10年債利回りの4.25%です。ここを突破すると、AI関連株を含めたハイテク株全般にアルゴリズム売りが発動するリスクが高まります。日本株に関しては、USD/JPYが156円台を維持する限り、50,000円台は買い場として機能します。
4. シナリオ分析
雇用統計とCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)を控えた今週のシナリオです。
4.1 Bull Case (強気シナリオ:適温相場の継続)
- 条件: 雇用統計が+5.5万人前後で着地し、賃金上昇率が落ち着いていること。かつ、CESでNVIDIAやAMDが具体的なAI収益化ロードマップを示し、Baiduのような個別好材料が続くこと。
- 展開: 金利が4.15%以下に安定し、S&P 500は6,900ポイントを突破。BTCはATH(史上最高値)を更新し、アルトコインへの循環物色が加速する。
4.2 Bear Case (弱気シナリオ:金利ショック)
- 条件: 雇用統計が強すぎ(+15万人超)て利下げ期待が消滅、または地政学リスク(中国の報復措置など)が具体化し原油が急騰する場合。
- 展開: 米10年債利回りが4.3%へ急伸。Teslaなどの弱含み銘柄が先導して市場心理を冷やし、S&P 500は6,750ポイント付近まで調整。VIXが20を超えて跳ね上がる。
5. 投資戦略 (Actionable Insights)
市場環境を踏まえた、今週の具体的なアクションプランを提案します。
5.1 全体スタンス:押し目買い (Buy Dips) だが「選別」を厳格に
全体相場へのベット(インデックス買い)よりも、セクターローテーションを意識した個別株戦略が有効です。雇用統計通過まではポジションサイズを抑え、イベント後の方向感を見てから動くのが賢明です。
5.2 セクター別戦略
AI・半導体 (Buy / Hold)
- NVIDIA (NVDA), Baidu (BIDU): トレンドは継続中。CESでのニュースフローによる乱高下があれば、サポートラインでの押し目買いを推奨。
- AMD: 新製品発表に注目。期待先行で買われている場合は「事実売り」に注意。
EV・バッテリー (Avoid / Sell)
- Tesla (TSLA), Samsung SDI: 構造的な需要減退(冬の時代)に直面しており、リバウンド狙いはリスクが高い。戻り売り、または静観を推奨。
日本株・輸出関連 (Buy)
- Toyota (7203), Trading Houses: USD/JPY 156円台は強力な追い風。米金利上昇に対する耐性もあり、日経平均50,000円近辺でのエントリーは妙味あり。
暗号資産 (Aggressive Buy)
- BTC, ETH: 株式市場との相関が薄れており、ポートフォリオの分散効果が期待できる。9万ドル近辺でのBTC、またはDeFi再評価に乗ったETHへの配分維持。
5.3 リスク管理
- 撤退ライン: S&P 500が6,780を割り込む、あるいは米10年債が4.3%を超えて引けた場合は、リスク資産(特にハイテク株)のポジションを20-30%縮小し、現金比率を高めること。
結論として、2026年の初動は「金利を睨みながら、AIと日本株(円安)の果実を拾う」戦略が最適解となります。雇用統計の数字に一喜一憂せず、トレンドの強さを信じて臨んでください。


